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いつか来た道


2001年5月に誕生し、2006年9月まで続いた小泉政権によって、「聖域なき構造改革」が行われ、その中で、規制緩和と民営化の推進がなされた。それまでの内閣ができなかった不良債権処理にも成功し、危機的な財政も若干の立ち直りをみせた点など一定の評価はなされるべきだが、この内閣が断行した施作により、一層の貧富の差が生じた。
ひたすら経済合理性・効率化が図られた結果、各企業は、人件費負担の軽減のため、正社員の数を減らしてアルバイトやパートタイマー、派遣社員といった非正規労働者の数を増やしていった。厚生労働省の集計によると、1992年度は65.4万人であった派遣社員の数は2004年度には226.6万人と、12年間で3.5倍に膨れ上がっている。
2005年9月発表の厚生労働省の統計によると現在の派遣就業中の賃金(時間給換算額)をみると、
1,000円未満 19.2%
1,000円~1,500円未満 52.9%1,500円~2,000円未満 21.2%2,000円以上 3.4%
となっている。
同じく2005年厚生労働省の「賃金構造基本調査」によると、正社員と非正社員の賃金格差は、例えば男子で比べると、(1か月当たり単位1000円)
年齢     正社員   非正社員
18歳から19歳 169.1 153.5
20歳から24歳 201.2 173.5
25歳から29歳 243.0 201.9
30歳から34歳 291.1 224.0
とその差は歴然である。
2004年の労働者派遣法改正により、物の製造業務(製造業)への派遣が解禁になったことも派遣労働者の増加にさらに拍車がかかることになった。
なお、派遣労働者の年齢分布を、2004年の厚生労働省の集計でみると、25歳から34歳の年齢階級が全体の50.0%を占めており、若年層が圧倒的に多い。平均年齢は男性で37.0歳、女性で33.9歳となっている。
小泉内閣が目指した日本経済の効率化により思惑通り、非効率的な企業は市場から淘汰され町には失業者があふれ出た。しかしながら、その失業者を吸収する生産性の高い企業が次々に現れ、結果、「改革」は成功裏に終わるというシナリオ通りには予測に反して事は運ばなかった。
効率化を阻むものとして終身雇用制、年功序列賃金が崩壊し、または企業倒産や人件費負担を減らすため賃金の高い中高年層を中心としたリストラにより、中高年層でも低所得に呻吟する人々が確実に増えていった。
2005年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、年間の所定内給与が200万円未満の45歳から59歳の男性労働者の数は、2001年には30万8930人であったのが2005年には9万1080人増加して40万10人となっている。
2005年の自殺者数32,552人のうち、40歳代・50歳代の合計者数は12,794人で実に40%を占める。中高年自殺者の動機では、「経済・社会問題」が圧倒的多数をしめている。
④リーマン・ブラザーズの破綻と深刻化する貧困
2008年9月15日、米大手証券会社リーマン・ブラザーズが、連邦破産法11条(日本の民事再生法)を申請、事実上倒産した。引き金となったのは米国の低所得者向けローンであるサブプライムローンの破綻あるが、この日を境として、世界は100年に一度といわれる大不況に陥っていった。金融は言うに及ばず、これまでは優等生的な存在であった製造業でも輸出関連で落ち込みが激しく、減収減益、リストラが断行されるようになった。そしてまっさきに犠牲者となったのが、小泉政権時代に対象として拡大された、製造業に従事する派遣労働者であった。小泉改革は、麻生政権により大きく舵を切り替えられることになり、経済再生に向けて様々な施策がなされているが、回復の兆しはまだ見えず、多くの国民が貧困の迫りくる靴音におびえている状況が続いている。
⑤新自由主義の崩壊―いつか来た道
有名なアダム・スミスの「見えざる手」につらなる1980年代に登場した新自由主義の名のもとに、英国のサッチャリズミ、米国のレーガノミクスを擁して、規制緩和、国営・公営企業の民営化、市場原理至上主義、グローバル化などともっともらしいいセリフで突き進んできた「資本主義の先祖がえり」は、今回のアメリカの経済破綻で、完全にその指導性を失った。未だに未練たらしく自己の「信仰」を説き続ける竹中平蔵氏などはある意味で、気骨のある人物と言えるが、実際の貧困に苦しむ庶民にその論は今や全く説得力を持たない。
1929年の世界恐慌に対しニューディール政策がとられたように、今、各国政府が経済に大きく介入して立ち直りに躍起となっている。いつか来た道の再来である。
その中で、一層、深刻化した貧困問題が、今後どのように推移していくのか誰にも予測できないところに真の恐怖が潜んでいるのだ。



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