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ハーグ条約


国際結婚が増えると、その当然の帰結として国際離婚も増える。国際離婚に際して、子どもを実力行使して連れ去った一方の親が得をするという無秩序な状態を是正するために作られた多国間条約である。正式名称を「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」と言う。1980年にハーグの国際司法会議で採択されている。

この条約は、片方の親が、子どもを同意なく国境を越えて連れ去った場合に、親権や監護権をもつもう一方の親が子どもの返還を申し立てると、その子どもをすぐに元住んでいた国に返還することを基本原則とするものである。離婚しても父母の共同親権が当たり前の欧米では、離婚した日本人元妻が、子どもを連れて無断で日本に帰ってくることは、父親と父親の国にとってはりっぱな「拉致」に該当し、逮捕状が出され国際手配されたりする。実際、2010年9月には、アメリカ下院で、子どもの連れ去りは「拉致」であるとして日本を非難する決議を行っているし、今年に入っても1月には、フランス上院が早期批准を促す決議を行っている。

主要国のなかで日本は、ロシアとともに、未だ、加盟していない。

 

この、子どもの「拉致」問題は、実は、日本国内においてこそ、はなはだしい。日本は、先進国と称される国の中で、未だに、離婚後の単独親権制をとるもの珍しい国である。ダスティン・ホフマンが親権を取れなかった父親の悲しさを演じた映画「クレイマー・クレイマー」から30年以上、アメリカは現在既に、離婚後も共同親権の国になっているし、西欧・北欧では当たり前のことである。

エゴを収めることができず、角突き合わせて男女が分かれるのは勝手だが、子どもの預かり知らぬところで勝手に片方の親(家裁のやる気のないステレオタイプの調停・審判等により親権者は85%以上、母親になるので子どもにとって失われるのは父親)を失ってしまう子どもは、たまったものではない。面会交流も、多くて月に1回、数時間。やっと得たその面会交流も、監護親の気分次第で踏みにじられ、裁判所に履行勧告を求めても全く実効性なしで、子どもは、「拉致」されたままどんどん時間だけが過ぎ去って行き、子どもは養育親に刷り込まれて大きくなる結果、父親をまるでエイリアンに対するかのような感情を抱いて成長してしまう。

これは、今までに私が受けた多くの離婚相談からの抽出だが、私自身の体験から考えても、実際、現状は、そうなのである。

 

私は、成年後見人として、多くのお年寄りのお世話をしてきたが、昭和30年代に離婚されて親権を取れず、子どもと生き別れになってしまったお年寄りを、数ケース見てきた。この時代は、「拉致被害者」は元妻である母が多い。家制度の名残か、子どもは、特に男児は跡取りとして夫の「家」に残し、妻を追い出すという場合がほとんどである。ひどいケースでは、妻が病気で入院したことを奇禍として、まさしく追い出して離婚し、経済力のある夫が親権を握って、愛人とすぐに再婚していたケースもあった。そういう「拉致被害者」のひとりである年老いてしまった母が、もう、回復しない病に罹った時に一目、息子に会いたいという願いを私に託されたことがあった。私は、苦労して親子の対面にこぎつけたが、既に40歳を超えていたその息子からは、ついぞ、病に苦しむ実母をいたわる言葉も、「おかあさん」という呼びかけもなかった。父と継母から、実母は「人格破綻」の変な人と教え込まれて大きくなったとのことだった。私は、約5年間、この実母の、任意代理人をしていたが、「人格破綻」など思わせるものは、何一つなかったのだが・・・

 

日本は、外圧でしか変われない国である。このハーグ条約の問題が、日本の常識が世界の非常識になっている状態を是正してくれることを期待している。日本も批准している世界の常識である「子どもの権利条約」でも、「児童が父母のいずれとも人的な関係および直接の接触を維持する権利」および「児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有する原則」が謳われている。

離婚後の共同親権が世界の常識なのである。これを原則としたうえで、DV等の特殊事案は、欧米を参考に制度的に担保すればすむ話しである。圧倒的に多い、DVのない「性格の不一致」などを理由とする離婚で一方の親を奪われる被害に遭う子どもを、一刻も早く救済しなければならないのだ。



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